にごころ

お手柔らかにm( _ _ )m

KEY × 田中ロミオ 『終のステラ』感想

 ネタバレ有り、お気持ち垂れ流さないと他の作品にしっかり移れないのでしたためてみる。

 

 誤って開かれた未プレイの方のなかで、

田中ロミオさんの作品が好き

 → 迷わずやった方がいい

・『人類は衰退しました』のアニメはみた

 → 「妖精さんの、おさとがえり」 における わたし と 助手さんの硬派な冒険が楽しめたなら多分普通に最後まで楽しめる

・僕と同世代(年齢的に結婚してたり、子供が出来始めたりしてる世代)

 → 世代の間に挟まりかけの人には染みるものがある

な方だったら、体験版のダウソからオススメしたい。

 

◆公式サイト

key.visualarts.gr.jp

 

◆笑ってしまったamazonの通常版の感想

 

以下、自分用。

・プレイのきっかけ

 ブルアカのキサキ様二次創作を漁る中で、とある絵師のメディア欄で本作を見かけ、ぐぐる田中ロミオだ!しかもDL版2000円だ!安い!と飛びついた

 

・執筆動機

 プレイ後、神すぎてサントラ欲しくなったから中古の初回限定版を頼んだものの、ファッキン業者に引っかかり、サントラはつかないわ送料ぼられそうになるわでゴネたらamazon様の力でお金はマイナスにはならなかったけど、この作品を思い出すときに感動を邪魔された記憶で済ませたくないというお気持ち。怒りはネットの片隅に追いやるのじゃ...

 

以下、ネタバレ有。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--- 念の為のネタバレ配慮の壁 ---

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆公式の田中ロミオさんへのインタビュー記事

https://fes2022.product.co.jp/visualstyle/interview02.html

 

◆参考になった方の感想

http://escapespell00x.seesaa.net/article/492571723.html

 人間とアンドロイドの境界 をしっかり言葉に直してくれてて、

 2週目すっきり読み直せて助かりもうしたm( _ _ )m

 

・本作への感想

 ネタバレなし感想だとamazon, dlsite, fanzaにお話, CG, 曲の素晴らしさを語ってくれてる方がおられるので、自分向けに読了してからも考えさせられていることをだらだらと。

 

 シナリオを読み進める中で思い出したのはテッド・チャンの言葉。

 SFに登場する人工生物は、ゼウスの頭から鎧をまとった姿で出現したアテナのように、完全な姿で生まれ出る場合が多いが、実際は、意識はそんなふうには働かないと思う。人間の心について経験的に知っていることをもとにしていえば、役に立つ人間を生み出すには、少なくとも二十年のたゆまぬ努力が必要だ。人工生物の教育にはそれより時間がかからないと考える理由は見当たらない。

 

テッド・チャン 『息吹』 作品ノート ■「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」

 

 上記作品を履修していたのもあり、お話の展開としてのジュードとフィリアの親子関係や、知性を育むことを目的とした旅の起伏だったりはわりとすんなりと受け入れられた。ラストシーンまで含めて、もっと驚かせて欲しかった、とかは微塵もなく、細部に至るまで納得しっぱなしだった。逆を言うと、人間に詳しすぎてむしろ引いた。どんな視点で生きていたら、こんな風に人間を浮かびださせることができるんだ...

 

 特に好きなのは、「Day 74 対峙」のシーン。

 ジュードの選択とフィリアの選択。

 

 ここがあまりに良かったので、最近子供が生まれた知人にオヌヌメしたら早速プレイしてくれた。別に子供に銃をつきつけて欲しいわけではない。

 合理的な考え方は感情を廃する。判断の要素として同じサイズに並べられ、優先順位を低く設定されてしまいがちな愛憎といった感情が自立のきっかけになる、ということ。ハッとさせられたところでもあるし、忘れてはいけないことだなと感じた。

 合理性は便利すぎる反面、正しく扱うために必要な現象学の主観や客観(あと還元)といった目線を知識として持ってないと経験的に「子供のため」を想像してしまう罠があるな、と未婚のおっさんながら思ってるので、何かの学びになってたらいいなと思う。余計なお世話ではある。(自己満)

 

 まぁ現実にあてがうには前提が違うかもというのはある。フィリアはAe型アンドロイドとして、人間を愛するように、人間に愛されるように作られ、設計思想に、言い換えると遺伝子に組み込まれた博愛主義に対しての、ジュードの選択(親子ではない運び屋と荷物の関係に再構成する)に自分の存在を否定されたように感じて生じた憎しみと、それでも撃つことはできず、ジュードを親として愛していることを自覚したことで、葛藤が生じて選択したわけで。リアルな人間が根本的に人を愛するようにできているか?については、アヴェロンの野生児のような話もあるし、言語のせい(後付け)かが僕にはわからん。

 ただそこらへんは、赤子は母親の腹の中で笑顔の練習をしてる、みたいな話もあるし、田中ロミオさんのインタビューにもあった「動物的本能ありきで、後付けで理屈を乗せたようなもの」な人間の姿をアンドロイドであるフィリアに重ねて見ることもできるという解釈にしてある。

 

 愛憎の解釈が合ってるかはさておき、世の中がどんどん丸くなる一方で、その内側で生きてるにしろ、憎しみという分かりやすい葛藤を生じさせるキーが使いづらくなるのって不便だなとも思ってしまった。葛藤もなく、選択が存在しない世界ってのは突き詰めると伊藤計劃さんの『ハーモニー』の世界を想像しちゃうけど、社会システムが追いつかないと案山子が増える一方なのよね...あの世界は感情すら記号にしてたけど。

 考えられる人を増やすってのは大事ってのは最近仕事で何人かに仕事を教えながら回さざるを得なくなったのもあって、対人折衝を考えるきっかけにもなってくれている。指示した内容の通りに動いてくれるのはありがたいけど、指示しなくてもやってくれる方がいいし。別に親→子に対して以外にも心を育むケースは存在するのもあって、おっさん向けだよなぁとも思ってる。

 

 人間とは何か? 心とは何か? については、まず僕自身はAIやビッグデータというワードがメディアで目についたときにG検定を取るのにAI勉強したら、ただの統計やんけ...とガッカリした後、『人工知能のための哲学塾』を読んで論理的に意識を作るのって無理では?というかコーディングされてなくない?ってなったことがあった。

 なので、本作のシステムとしてのAIの描き方には納得しっぱなしだった反面、リンクに置いた方のような

 ・感情の6情を持つ

 ・夢を持つ

 ・死を理解する

という自分が相手を人間と感じられる要素は考えたことがなかった。というか、個体の機能としてどうやったら意識が働くのか?の観点でしか考えたことがなかったので、自分は人間と相手に期待するときに何を思い浮かべてるのかを振り返っている。対人が面倒すぎて、そういう人もいる、で片付けがちになっていることもわかった。

 個人的には夢を持つ、というより意志を継げる、のがしっくりくる。個体として、未来を想えるのって余裕がないと生まれないし、社会あって、と思っちゃうので。なくても意志を共有できる、受け継げる素質のが人間に求めてるものな気がする。(だからSFが好き) あとそのうえでスカイ・クロラで描かれていた無限を引き受ける精神のが汎用的だなって思ってる。

 ただ捉え方が合ってない気がしてきた。上のようなものを考えるときは、意志を持つのに必要なものと考える方がいいのかな...そこが自分でも結構悩ましい。わりとハーモニー読んでから魂を擁護する言葉はやっぱなくね?と負けがちなので。そのうえで意志を持たなくていいことは贅沢だとも思ってしまう。今後もぼんやりと考えよう...

 

 あとアンドロイドに人間の自我を生成する下りで、粘菌による知能の構成にはぇ〜と納得しつつ、重力で制限が発生する部分に愛が感じられた。自己を縛り付ける土台があって、飛ぶことができるってのは最近だとCyberpunk Edgerunnersでもいい表現だなと感じたので。

 

 インタビューを読む限り、続編に期待してもいいのかな?と楽しみにしてるが、個人的にはエンディングで時間が表現されていたし野暮といえば野暮だけど、ジュードと別れた後のフィリアがどう悩んで前に進んでいるのか?がもうちょい知りたい。ただフィリアの一人称って形式だとどうなんだろうな...ver君目線で記録を復元して教えてくれてもいいし、そういう話も読んでみたい。

 人類より強固な体を持つアンドロイドだからこそ、永遠に向かいあう機械としての美しさを勝手に期待してる。

 

・書いてみた感想

 思ったより良きという感情がそのまんまで、自分の中のムズムズが書きながら解消できなんだ。ただ言語化できる気力が月曜が近づいてきて(ヽ´ω`)してきたのでまたじんわり忘れた頃に読み直して考えよう。